良いものづくりはコードの外から始まる

エンジニアの仕事と聞くと、多くの人がコンピューターに向かって黙々とコードを書く姿を思い浮かべるかもしれません。もちろん、プログラミングは中心的なスキルであり、その能力なくして仕事は成り立ちません。しかし、優れた技術者であるためには、技術力と同じくらい、あるいはそれ以上に重要な能力が存在します。それは、目の前の課題の本質を深く理解する力です。

ソフトウェア開発の現場では、顧客や企画担当者から「こういう機能が欲しい」という要望が寄せられます。このとき、言われた通りにすぐ実装を始めるのは、必ずしも良い進め方とは言えないでしょう。なぜなら、その要望の裏には、本人たちも気づいていない真の目的や課題が隠れていることが多いからです。ここで活きてくるのが、丁寧な聞き取りのスキルです。

たとえば、「データをCSVで出力する機能が欲しい」と言われたとします。ここで一歩踏み込んで、「なぜCSVでの出力が必要なのでしょうか」「そのデータを使って、次にどのような作業をされる予定ですか」と質問を重ねてみましょう。すると、「実は、別のシステムにデータを取り込むために、毎週手作業でコピー&ペーストをしていて大変だから」という背景が見えてくるかもしれません。もしそうであれば、CSV出力を実装するよりも、システム間で直接データを連携させる仕組みを開発する方が、根本的な問題解決につながる可能性があります。

このように、相手の言葉の表面をなぞるのではなく、その奥にある「本当に解決したいこと」を掘り起こすことで、開発途中の仕様変更や無駄な作り直しを劇的に減らすことができます。結果的により少ない労力で、周囲から「これこそが欲しかったものだ」と喜ばれる成果物を生み出せるようになるのです。

エンジニアの仕事は、単に要求されたものを作る作業ではありません。技術という道具を使って、人々の抱える問題を解決へと導く、創造的な活動です。もし「一生懸命作ったのに納得してもらえない」といった壁を感じているなら、技術の磨き方と同じように、相手の真意を引き出すコツを学んでみてはいかがでしょうか。まずは身近な場面から意識を変え、対話で価値を生むエンジニアへの第一歩を踏み出してみてください。

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