未来の自分と同僚を助けるコードの書き方を考える

「良いコードとは何か」。この問いは、多くのエンジニアが一度は自問したことがある普遍的なテーマでしょう。この問いに唯一絶対の正解はありませんが、多くの経験豊富な開発者が共有している、ある種の共通認識は存在します。それは、単に「正しく動く」ことだけを指すのではない、という点です。

ソフトウェアは、一度作ったら終わりという工芸品ではありません。リリースされた後も、バグの修正、仕様の変更、機能の追加など、長期にわたって保守・運用されていきます。そして、そのコードに手を加えるのは、書いた本人だけとは限りません。多くの場合、未来の自分、あるいはチームの別のメンバーが担当することになります。この事実を念頭に置くと、「良いコード」の姿が少しずつ見えてきます。

良いコードの重要な要素の一つは、「読みやすさ」です。一般的に、コードは書かれる時間よりも読まれる時間の方が圧倒的に長いと言われています。変数や関数の名前がその役割を的確に表しているか、複雑なロジックに適切なコメントが付与されているか、処理の塊が適切な粒度で関数に分割されているか。半年後の自分が読んでも、あるいはプロジェクトに新しく参加したメンバーが読んでも、処理の流れをスムーズに理解できるコード。それが、読みやすいコードと言えるでしょう。

もう一つの重要な要素は、「変更のしやすさ」です。将来の変更を完全に見通すことは不可能ですが、変更が起きることを前提とした設計は可能です。例えば、一つの機能に関するコードが一箇所にまとまっているか(凝集度)、ある部分の変更が他の無関係な部分に影響を与えにくくなっているか(結合度)といった観点は、コードの保守性を大きく左右します。変更に強いコードは、ビジネスの変化に迅速に対応することを可能にし、開発チームの生産性を高めます。

ときとして、エンジニアは難解でトリッキーなテクニックを駆使して、短いコードで問題を解決したくなる誘惑にかられることがあります。しかし、多くの場合、チームにとっては、誰もが理解できる平易で素直なコードの方が価値が高いものです。

突き詰めると、良いコードを書くという行為は、技術的な営みであると同時に、「未来の読み手への配慮」というコミュニケーションの一環でもあります。未来の自分や同僚を助ける、思いやりのあるコード。そんな視点を持つことが、一人のエンジニアとして、またチームの一員として成長していく上で、大切なことではないでしょうか。

Back to top